「場づくり」という漠然とした問いに向かう大塚のララバイ

2018.10.07 Makoto Ootsuka

仕事のこと

いやー大塚っすぅ!
十日町に拠点をおいて4年目。僕にも「場所」が出来ました。
今日は少し、場を持つことへの不安と期待を語りたいと思います。

何が起きたかとシンプルに言えば、これまで入居していたインキュベーションオフィスを退去して、シェアアトリエ&コワーキングスペース(以下、asto)を立ち上げて運営するという文脈が新しく生まれました。

<2018年10月12日(金)18:30〜オープニングパーティーやります!>
https://www.facebook.com/events/1141413236011158/

(もう一つ、ギャラリー&アートプランニングという側面もありますが次回。)


▲コワーキングスペース&キッチン、通路の奥には個別ブースト同じ広さのギャラリーがある。

軽く言ってるのですけど、2016年初夏あたりの@滝沢梢との作戦会議が最初で、割と前から計画は始まってました。

「実家の家業を継ぐのだけど、どうせ継ぐなら新しいことしたいわ。」

みたいな話から、家業の社員寮だった建物を何か人が集まる場所にしようっちゅう話に発展した様なのが最初だったと思います。そこからの紆余曲折は割愛するのですが、志が同じ方向を向いているので、目指すべき世界の獲得のためにお互い本業をしながらではありましたけれども、ようやく今年10月に形になったのでございます。


▲外観はこんな感じで、駅から徒歩8分くらい。目の前は高校

当初はゲストハウスにしよう。なんて話も出ていました。

「まちと関わりを持てるよそ者の滞在拠点は地域を変えるはずだ!」

ローカルマガジン界隈においても、ユースホステルやゲストハウスが流行りのようにも取り上げられていた当時は、過去に民家に毛が生えたような宿を3年近く運営していたこともあって、ここでもやれっかなとは思っていました。

これも紆余曲折あって、立地と建物的に宿泊場所を提供する困難さに挫折したことと、
「外から来る人の受け皿」の前に「この地の人々の可能性を広げる場所」を運営することが先なのではないか。

という気づきと共に、冒頭のような業態へと変わっていったのであります。柔軟性と都合の良さが大事です。

 

どんな人々が関わって誕生したのか

新しい拠点の説明をするには、どんな人たちが関わったのかを軽めに説明しなくてはなりません。
冒頭に登場した@滝沢梢は、astoとして運営される倉庫を管理する地元の着物関連製品の卸を営む企業の3代目?4代目?という立ち位置のお方。
僕の求めていた地元に根を張りながらも新しいことへ挑戦しようとする気概と実行量がある経営者です。

年齢的には一回りほど違うのですが、このプロジェクトを通じて、議論したり、バトルしたり、怒られたり、慰めあったりしながら「従姉妹の姉ちゃん」くらいの関係値にまで人間関係が育ちました。ビジネス的なJVでは割り切れない仲になっているのがポイントです。


▲普段のイメージとは全然違うけど、お茶目感あった方が絶対いい。

地元企業との繋がり、長年の経営によって得られてきた信頼と応援という僕が持っていない部分を多く持ってくれています。
@滝沢梢の同年代の人達と仲良くなる機会も増えまして、同時に人生の先輩達と仕事ができるという経験の幅を与えてくれました。

事業としては、@滝沢梢が代表を務める滝長商店と弊社における共同運営ということになっていますが、実質僕ら2人が現場にいる状態がデフォルトです。さらに、とかとこのオフィスも入居するという、己の文脈を全て突っ込んでいます。

実際の物件のリノベーション・空間デザインはまつだいと清澄白河の二拠点で活動をするgift_labのお二人に力と時間を割いていただきました。

数多くの場をデザインし続けているお二人のセンスを学びながら、「アートとは、カルチャーとは何か」、本質的なことは何なのかということを考えさせていただく日々でございます。移住する前は雑誌やWebの記事を読んで生き方を考える参考にさせていただいていた方々と仕事でご一緒出来るというのも、本当に貴重な機会でございました。

そんな場を中心的に運営していく4人と設計・施工を担当してくれる地元の兄さん姉さん2人が関わりあって誕生したのが、「asto」という場なのでございます。

 

どんな人をイメージして誕生した場所なのか

交流人口、移住定住、関係人口…この界隈で話される「外から人を呼び集める」という人口が減り続ける日本において、かなり厳しい戦いの先には「今、ここに住んでいる人々へのアプローチ」へ変わっていく方へ張ったというイメージです。

外から地域へ関わりたいということを考える人も、目指すならば開かれている人の集まる場所を目指すでしょう。
自分が地域を訊ねる時はソコを狙ってアポを取りますしね。

外へ外へと目が行きがちですが、
尊敬する場を持つ人たちが、やはり内側へとプレゼンスを発揮しているというのと
@滝沢梢が地元で100年続く企業の後継ぎという土着企業の戦士だからこそ、気づけた本質的な方向性なのかなと自己完結しています。


▲大分県国東市のアトリエでの体験が僕の中で大きなイメージソースになっている。

あ、上の写真は取材に行きまーすと言っただけなのに地元の人が集まってパーティーしてくれた大分県国東市の方々。
開かれた地域の繋がりが核あれば、外から来た人の心にもその地域を刻みつけられる。かなり、心に残っている。

ここで重要なことなのですけど、十日町において「作業をするスペース」自体の必要性は薄いと思っているのです。
もっと言えば、一人あたりに与えられている空間が広いことが地方に住むメリットであるのに、「場・スペース」を提供したところでプレゼンスにはなりにくい気がしているのです。特に十日町はwifiとデスクと電源のある場所は数多くありますからね。土地も家も余ってる。

だから、座標によって区切られた空間があっても、そこが醸し出す雰囲気は重要だし(この点については洗練されてるから大丈夫。)中身や機能性が満たされていないと(この辺りはまだ課題)価値はついてこない。

まぁ、実際に実行するの大変よね。

僕らの運営する施設は、シェアオフィスとして使えるブース、WSやギャラリーになるスペース、コーワーキングスペース、キッチンがあるから、「これらを組み合わせて、この場所に来る理由をつくる」ことが目下のミッションです。

そういう時って「イベント開催!」ってなるけど、これが結構疲れるから、もっと日常的な「喫茶店がわりにコーヒー飲む」とか「ついでに朝ごはん食べる」みたいな外付けのリビングとしての価値をつくるのが一つ。

これは結構、良いコーヒーメーカーとか炊飯器とかトースターとかで何とかなる気がしています。

頭を悩ませるのがもう一つのこと。

人生の可能性を広げるメリットを提示すること

もう一つは事業や活動、個人のビジネスや表現、踏み込めば人生の可能性が広がるという「メリット」を提供すること。
不可能に近い。だけども、地方に漂う閉塞感とかは可能性を狭めているから、勿体無いですよ。実家や家業あるの羨ましいです。

人生をエキサイティングにすることは、視点を変えれば誰にでもチャンスは流れてくるはずで、それは何も移住者やよそ者だけに訪れるものじゃない。むしろ、地元の人こそ地に足をつけながら、そこに手を伸ばしていると感じています。

この施設が始まってから、最初はそういう人たちが、アンテナ高くこの場所を見つけてくれて利用してくれるはずなので、そういう人たちとのコミュニケーションの中から、この施設に追加していく要素を決めていけたらと思っています。


▲年代と立場が違うからこそ、人間関係のミックスが起きる。バランスは難しい。

「シェアアトリエ」であるので、作家さんやアーティストさんに対しては継続的に創作活動をしていけるような収入基盤をつくるサポートをしたいなと思ってますし、起業や事業をしていく人に対しては@滝沢梢の持っている地元の繋がりや、微力ながら僕の肉体を提供するなどしてサポートしていけたらと思っている訳です。


▲織物体験とかスクール関連のこともやりたい

この話は次回、もっと書きたいのですが、この地に連綿と続いてきた価値のあるものを次の世代へ繋げていく拠点でもありたい。そして、それを単なる社会奉仕ではなくて事業として続けていきたい訳です。

人々が程よい距離感で自由な人間関係をつくれる場所であるために

人も少ない地域ですからね。噂も広がるし、人間関係の距離も近いです。
距離感が近いからこそ、しがらみも生まれることはございます。人と関わらずに生きることはとても難しい。

大袈裟な話かもしれないのですが、自分の人生の可能性を広げるチャンスを掴むのに、そういった「しがらみ」の様なものや、先入観や固定観念が足枷になっているのなら関わりを持って欲しいなって思います。そういった矢面には我々が立つので。

さらに幸運なことに、このプロジェクトに関わっている方々は様々な修羅場を潜り抜けてきた先輩経営者ばかりですから、何か問題が起きても進んでいけるのではないかと思いますし、批判や批評も何のその、糧にしていけるんじゃないかと思います。


▲秘密基地への入り口みたいでカッコイイ

十日町の地域性としてゴシップとか大好きだし、陰口や悪口なんて日常に浸透しているのは否定できないことでございます。
ただ、足を引っ張るほど性格が悪い人はいないし、本気で失敗を望んだり蔑むんだりする人は僕の周りにはおりません。

話がぶっ飛んで申し訳ないですが、「やりたいことがあるんだけど、恥ずかしくて誰にも言えなくて〜!」みたいな36歳の姉ちゃんと話してたんだけど、「逆にやりたいことないのが恥ずかしい」みたいな考え方も出来るのではないかなと思っておりまして、よもや究極的には年齢や立場も宇宙規模でみたら対したことないし、周りのことは気にしなくて平気なんじゃないかな。

そうもいかない事情があるのかも分かりませんけど、少し地域から浮いた感じの場所で、これまでとは違うコミュニティをこの場所を中心につくっていけたらいいなと思っております。

シェアアトリエ&コワーキングという点に絞って、十日町に新しく誕生した拠点という視点から説明してみました。
astoにはもう一つの理念(事業)があるのですが、そちらは次回にまとめたいと思います。

まずは、新しい可能性に手を伸ばすキッカケになるような場として、色んな人に使ってもらえたらと思います。それでは、また。

Makoto Ootsuka

この記事を書いた人

大塚 眞 / 経営ディレクター / ライター